お知らせ

2月27日卒業式での学校長式辞

16.02.27

大阪成蹊女子高等学校 第68回卒業証書授与式式辞

 

建学の精神「桃李もの言わざれども下おのずからこみちを成す」に出てくる「桃」はモモ、「李」はスモモを意味しており、モモやスモモの木の下にはおのずと小道ができるという史記の一説を本校の教育目標にしています。これに由来して植えられている校庭のスモモの木も、つぼみが膨らみ始めました。季節を告げる花々は、確実に春の訪れを身近に伝えてくれています。
 
このような佳き日、大阪成蹊女子高等学校第68回卒業式を挙行いたしましたところ、日頃よりご支援を賜ります後援会会長の寺家(ジケ)様、蹊友会会長の中川様、そしてPTA会長の宮園様はじめとしてPTA役員の皆様方にご臨席を賜り、巣立ちゆく本校生の門出を祝福していただきましたこと、心よりお礼を申し上げます。
 
卒業生は、ただ今卒業証書を授与しましたとおり、キャリア進学コース182名、幼児教育コース116名、美術・イラスト・アニメーションコース76名、スポーツコース22名、キャリア特進コース15名、計411名でございます。
本校のこれまでの卒業生の総数は33959名、本校の前身である成蹊女学校の時代を合わせると、およそ4万名、更に本学園全体では10万を超える卒業生を世に送り出したことになります。卒業された多くの諸先輩は、社会で活躍されており、本校で学び、身に付けられた力を世界を舞台にして存分に発揮される方もおられます。卒業にあたって、改めて本校の8 2年の伝統と歴史を感じるとともに、卒業される皆さんのこれからのご活躍を祈念する次第です。
 
ご多忙の中、ご参列いただきました保護者の皆さまは、さぞかしお喜びのことと拝察し、心からお祝い申し上げます。
本校は、大阪府内の人気のある私立女子校として、6年連続入学者数第一位を誇っています。今年の入学者数は700名近い生徒の入学が予想されています。
それは、キャリア教育、とりわけ女子に特化したキャリア教育を特色の一つとしており、大規模の学校であっても一人ひとりの生徒を大切に、将来の夢を実現できる力を育む本校の教育方針が、本学園の建学の精神に加わって、多くの人たちに理解され、ご支持を受けた結果であると思っています。
私たち教職員一同は常に生徒に寄り添い、生徒たちの成長を見守りながら、高校生活が充実したものになるよう精一杯努めてきたつもりです。時には厳しい指導もありましたが、生徒への愛情を忘れず、全力を挙げて生徒たちを導いてまいりました。そして今、生徒たちが、大阪成蹊女子高校の卒業生の名に恥じないまでに成長を遂げ、自信を持って世に送り出すことができますことは、私たち教職員の大きな喜びでございます。その間、本校の学校運営に対して、PTAの皆様をはじめとして、関係諸団体の方々の温かいご理解とご支援をいただきましたことに厚くお礼申し上げる次第です。ありがとうございました。
 
さて、卒業生の皆さん、ご卒業おめでとう。
皆さんは、この3年間の本校の学び、とりわけキャリア教育の中で成長し、主体的に生きるための力を身につけてこられました。自己の在り様を見つめ、これからの社会で生きる力を養ってきたのではないでしょうか。
社会を見ると、個人の価値観の変化や、価値観の多様化が指摘されています。確かに、かつての若者には、個人に与えられた人生の選択肢は、決して多くありませんでした。男性は仕事一筋、女性は良妻賢母、それなりの年齢になれば結婚して子どもをもうけるというような、伝統的に受け継がれてきた男女の役割を受入れることが当然のこととされ、また多くの人がそれを実践してきました。選択肢が少ないことは、窮屈であると同時に、迷いもないシンプルな時代だったと言えます。
しかし、現在では、個人の選択肢の幅は拡大し、多様な生き方が可能になりました。もはや仕事も家庭も、さらには結婚も、どのようにするかは個人の意思と度量に任されています。こうした状況は豊かさがもたらした価値観の変化と思います。その一方で、「自分の人生を、自分自身で選択しなければならない。」という新たな課題を、個人に突きつけています。先日、本校で行われた、びわこ成蹊スポーツ大学学長の嘉田由紀子先生の話を思い出してください。先生は、仕事と家庭・子育ての両立を目指し、人生を自らの力で切り拓いてこられました。価値観が変化する中で、自分の将来は、自分で決めるというお手本を示されました。
ところで、現在の社会は、価値観が多様化していると言われていますが、ほんとうにそうでしょうか。今の日本では、諸外国に見られない我が国独自の現象が見られます。若者たちには、他の人と違うことを極端におそれる傾向があるのではないでしょうか。皆が良いと言えば、最新のスマホやIT端末を持ち、みんながおもしろいというテレビドラマがあれば、共通の話のネタとして同じドラマを観る。みんながステキだという音楽は、ネットのダウンロードで端末に取り込み同じ曲を聴く。これらのどこに多様な価値観があるのでしょうか。グローバル時代と言われる今日(こんにち)、日本の若者たちのこのような画一的なスタイルは世界から奇異に感じられるものになっています。
あえて他の人とは違うことを言い、違うものに価値を見いだし、違う行動をとれとは言いません。それは、わがままと言われる可能性がありますし、単なる独りよがりでしかないからです。そこから新しいものは生まれません。しかし、他の人と同じことをする場合でも、違うことをする場合でも、自分でしっかり考えた上の行動であれば、それは今求められている生き方になるでしょう。単なる付和雷同の生き方では、自分の人生を切り拓くことはできません。グローバル時代の今こそ、世界の多くの若者と同様に、自分の責任において自分の判断で、ライフスタイルを選択することが、今まさに求められている力なのです。
 
有名な作家の五木寛之(いつき ひろゆき)さんは、次の言葉を伝えています。
「自分にとって何が大切なのか、自分の価値を、常識や一般論に惑わされないで考えてみよう。何よりも、自分が価値を感じることを高めていかなくては、満足度も充実度も高まらない。他人と同じ基準や価値観で考えても、同じように感じられるとは限らないから。」
この言葉にある「価値を感じる」とは、他の人の価値観、常識に惑わされず、素直に自分が大切だと思うこと、感覚として感じるものが自分の価値観であることを示しています。更に、「それを高める」とは、個人の価値観は普遍的、固定的に捕らえるのではなく、自分の経験や学び、成長を通して、変化または発展しうるものだと述べています。
皆さんは、本校を卒業した後も、途絶えることなく学び、成長し、生きる力を積み上げてください。そうすることで、皆さん自身の価値観を高め、素晴らしい未来を切り開くことができるでしょう。
 
いよいよ、お別れの時がきました。
本学園を卒業される皆さんは、本校82年の歴史のうち僅か3年を過ごしたにすぎません。しかし、その期間は短くても、明らかに一人ひとりがこの大阪成蹊女子高校の歴史の中で学び、成長しました。本分である学業はもとより、他者を敬うと共に、自分自身にプライドを持つこと、そして他者と自分との関係性を高めることの大切さなど、人間として必要な力を十分に育んでこられました。母校である大阪成蹊学園で学び、成長したことを、それぞれの歴史に刻み、自己の宝として、末永く大切に、そして本校で学んだことにプライドをもってください。皆さんが卒業された後も、大阪成蹊女子高等学校の伝統の灯(ともしび)は絶えることなく、更に輝き続けることでしょう。本学園が未来にわたって輝き続けるということは、卒業される皆さんが、高尚な価値観をもち、すばらしい人として光り輝くことなのです。
そして、卒業生の皆さん、皆さんの一人ひとりが、この社会になくてはならない大切な人であることを決して忘れないでください。
改めて、ご卒業おめでとう。そして、皆さんさようなら。
旅立たれる皆さんのご多幸を心からお祈りして、お別れの式辞とします。
 
平成28年2月27日
大阪成蹊女子高等学校長 紺野 昇
 
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