大阪成蹊女子高等学校 令和6年度(第77回)卒業証書授与式式辞
ただいま卒業証書を授与しました452名の皆さん、卒業おめでとう。
厳しい寒さが続きましたが、ようやく暖かい日差しが届くようになってきました。
学園の桃の木も、皆さんと同じように、春に花開く準備を整えているようです。
まだ浅きとはいえ春の訪れを想うこの佳き日に、旅立ちの時を迎えた皆さんの、晴れやかな、成長した姿を見ることができたことは、私たち大阪成蹊女子高校の教師にとって、この上ない喜びです。
また、本日は、卒業生の皆さんを祝福するために、多くの方が駆けつけてくださいました。
大阪成蹊学園蹊友会会長様、同じく後援会会長様はじめ、ご来賓の皆さま、ご多用中にも関わりませず、ご臨席を賜りましたこと、厚く御礼を申し上げます。
またこれまで卒業生たちを見守ってくださり、暖かなご支援を賜りましたこと、重ねて御礼を申し上げます。
そして、本日、ご列席をいただきました保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。
心よりお喜び申し上げます。
また、これまで本校の教育活動に、深いご理解と多くのご協力をいただきましたこと、厚く御礼を申し上げます。
これまで様々なご心配、ご苦労をなさりながら、お子様の成長を見守ってこられたことと存じます。
今日、こうして卒業の日を迎えたお子様の姿をご覧になられて、「本当に大きくなった」と、喜びを噛みしめていらっしゃることと拝察いたします。
改めまして、お子様のご卒業をお喜び申し上げます。
さて、卒業生の皆さん、改めて、卒業、おめでとう。
高校生活も今日で終わり、いよいよ旅立ちの時です。
入学してからこの日を迎えるまで、皆さんそれぞれに、本当にいろんなことがあったと思います。
決して楽しいことばかりではなく、時には涙し、時には思い悩んだこともあったでしょう。
でも、そんな時、あなたの横には必ず友達がいたと思います。
修学旅行、体育祭、文化祭、毎日の学校生活。
授業時間、休憩時間、昼休みや放課後のひと時。
そこにはきっとあなたと同じ時間を過ごした友達がいたと思います。
それこそが、あなたが大阪成蹊女子高校で得た宝物。
その宝物を胸に、これからの新しい日々に向かっていってください。
では、卒業に当たり、皆さんに二つの言葉を贈りたいと思います。
一つ目は、「最も美しい化粧は情熱だ」という言葉です。
これは、フランスのファッションデザイナー、イヴ・サンローランの言葉です。
この人のことは皆さんも聞いたことがあると思います。
1936年にフランス領のアルジェリアで生まれた彼は、1961年に自身のブランドを創設し、2002年に引退するまで、「モードの帝王」と呼ばれてファッション界をリードしてきました。
オートクチュールやプレタポルテなどのドレスだけではなく、香水や化粧品なども手掛けて、有名なブランドを築き上げました。
ところで、皆さんの考える「化粧」ってどういうものなのでしょうか?
もちろん、「私はしない」という人もいると思います。
それも、その人の想いです。
もしするとしても、単に身だしなみや外見を飾るというだけのものではないかもしれませんね。
それは自分の個性を表現するもの、普段の自分と少し違う自分を見せるもの。
あるいは気持ちを切り替えたりリラックスしたりするためのものなのかもしれません。
あるいはまた、自分に少し勇気と自信を与えるためのものかもしれませんね。
イヴ・サンローランが言っているのは、あなたのその「こうなりたい」という気持ちや想い、そうした心の内にある「情熱」こそが、あなたを最も美しくする化粧であり、あなたが勇気と自信をもって何かにチャレンジしていくための原動力だということなのでしょう。
なりたいものになるためには、そして目標に近づいていくためには、心の内に「情熱」が必要です。
その「情熱」をもって何かに向かっていくあなたは、きっと美しく、輝いていることでしょう。そんな風にこれからの人生に向かっていく皆さんを、ずっと見ていたい気がします。
もう一つの言葉は、一篇の詩として、あなたたちに贈ります。
私が高校時代に出会い、その後もずっと大切にしてきた、リルケという人の作品です。
これが 僕の 戦いだ。
あこがれに 身を清めて
日々をつらぬき進むことが。
それから 強く どっしり
幾千の根を張って
人生に深く食いいることが――
そして 苦しみを通して成熟し、
はるかに「人生」から 立ち出ること、
はるかに「時間」から 立ち出ることが!
リルケの言う「あこがれ」と、イヴ・サンローランの言う「情熱」と。
どちらもあなたが夢を追いかけるときに、とても大切なものだと思います。
これから人生という大海原に乗り出していくあなたたちに、この二つの言葉を贈ります。
「あこがれ」と「情熱」。
これらの言葉を胸に、ずっと夢を追い続けるあなたでいてください。
Bon voyage. どうぞ良い航海を。
さて、お別れの時が来ました。
皆さんにとっては新しい毎日の始まりです。
どうか、健康にだけは気をつけて。
そして自分自身の人生を、思いっきり楽しんできてください。
大阪成蹊女子高校を卒業し、社会へ出ていくあなたたちが、いつの日か多くの夢を叶えて、豊かな人生を送られんことを、そして、あなたたちの人生が幸多きものとなりますように、心からお祈りし、私の式辞といたします。
卒業、おめでとう。
そして、いってらっしゃい!
令和7年2月28日
大阪成蹊女子高等学校 校長 向畦地 昭雄
<参考文献>
*浜本哲治著「偉人たちの名言集 海外&日本セット」(電子版)、2015年、ゴマブックス株式会社
*Saint Laurent公式オンラインストア(YSL.com)のWEBページ(2025年2月21日閲覧)
(https://www.ysl.com/ja-jp?srsltid=AfmBOort9REW3-wUsWpeW_jxL1aGQE-MlFtPxWloe8BYCOs0wM7xX3n4)
*国立新美術館「イヴ・サンローラン展」のWEBページ(2025年2月21日閲覧)
(https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/ysl/)
*「イヴ・サンローラン美術館 パリ」のWEBページ(2025年2月21日閲覧)
(https://museeyslparis.com/en/practical-information)
*秋山英夫訳編「美しき人生のために リルケの言葉」1964年、社会思想社