お知らせ

2月1日全校朝礼での学校長講話

18.02.01

平成29年度 大阪成蹊女子高等学校 2月全校朝礼講話

 
今日から2月になり、3学期の授業も残り少なくなってきました。
1年生の皆さんはこの1年間、2年生の皆さんは2年間、本校でどれ位の学習を積み、多くの行事を通じてどのような成長を遂げたでしょうか。
皆さんにとって、知識や技術の習得は最も大切な学びですが、それと同じくらい、本校の建学の精神である「人と人との関係性を高め、人間力を育むこと」も極めて重要な学びです。
いつもお話していますが、他者との関係をうまく築くというのは、本当に難しいことです。
人が複数集まって集団を築く時、自分に合わない人との関係性に悩み、集団に自分自身がなじめないことで悩む、また仕事や家族がうまくいかないことで、挫折することもあるかもしれません。
生きることには、多くの苦労がつきまといます。
 
昨年10月神奈川県座間市で起こった自殺志願者9人が殺害された事件を知っていますね。
いろいろな理由で、疲れ果てた人の中には、自殺を考えてしまう人がいます。
先日、世界保健機構が発表した国別の自殺者の統計を見て、私はたいへんショックを受けました。
先進国の中でも、我国は若者の自殺者が目立って多いのです。
 
私たち教職員は、皆さんの夢を実現し、将来にわたって力強く生きる人に育って欲しいと願っています。
私たちは、ここに集まる全ての生徒が、将来も輝ける人になると思っています。
人が自分の命を絶つというのは、自分だけが人生から逃避していることで、その背後の家族や周りの人がどれだけ失望し、その後の人生が大きく変わるかを考えなくてはなりません。
 
今日は、3年前にも紹介したのですが、自殺をやめた人の作文を読みたいと思います。
交通安全の啓発文書に書かれた話です。お父さんが交通事故を起こして亡くなった家族の話です。
相手の方も亡くなり、補償という重荷を背負い、また残された子供たち、上の子が小学二年生、下の子が五歳の男の子の兄弟を必死で育てたお母さんの実話です。
お母さんは、自分たちの生活費だけではなく、事故でなくなった人への補償金の支払いもあって、朝の早くから夜遅くまで働きづめの毎日でした。
朝、子どもたちが起きると、お母さんは仕事に行ってます。夜は、子どもたちが寝た後で、疲れ果てたお母さんが家に帰ってきます。いつも、男の子の兄弟だけでご飯を食べています。
 
そんな日が続くある日、お母さんは疲れ果て、精神的にも追い詰められ、とうとう限界になってしまいます。
ついつい子ども二人と一緒に、お父さんのいる天国に行くことを考えてしまっていました。
そんな状況で、実際にあった子どもたちの出来事を、お母さんが文章にしたためたものを紹介します。
 
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「しょっぱいお豆」
 
朝、出かけに、上のお兄ちゃんにお母さんは置き手紙をしました。 
「お兄ちゃん、お鍋にお豆がひたしてあります。それを煮て、今晩のおかずにしなさい。お豆がやわらかくなったら、おしょう油を少し入れなさい。」 
 
その日も一日働き、私はほんとうに心身ともにつかれ切っていました。 
もう限界、皆で、お父さんのところに行こう。 私はこっそりと睡眠薬を買って帰りました。
 
家に帰ると、二人の息子は、そまつなフトンで、丸くころがって眠っていました。 
壁の子どもたちの絵にちょっと目をやりながら、まくら元に近づいた。 
そこにはお兄ちゃんからの手紙があったのです。
  
「お母さん、僕は、お母さんの手紙にあったように、お豆をにました。お豆がやわらかくなったとき、おしょう油を入れました。でも、けんちゃんにそれをだしたら、『お兄ちゃん、お豆、しょっぱくて食べれないよ。』と言って、冷たいごはんに、お水だけをかけて、それを食べただけで寝ちゃったの。お母さん、ほんとうにごめんなさい。
 
でもお母さん、僕を信じてください。僕の煮たお豆を一粒食べてみてください。
明日の朝、僕にもういちど、お豆の煮方を教えてください。
出かける前に、僕を起こしてください。おいしいお豆の煮方をいっしょうけんめいにおぼえて、けんちゃんに食べてもらうから。
僕、先に寝ます。明日、必ず起こしてね。お母さん、おやすみなさい。」 
 
 
目からどっと、涙があふれました。 
お兄ちゃんは、あんなに小さいのに、こんなに一生懸命、生きていてくれたんだ。 
私は睡眠薬を捨て、子供たちの枕元にすわって、お兄ちゃんの煮てくれた、しょっぱい豆を、涙とともに一粒一粒、大事に食べました。
 
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このお話を始めて読み終えたとき、熱い気持ちが湧き上がりました。
きっと皆さんもそうだと思いますが、私たちは何か辛いとき、苦しいときに、今の状況から逃げようとか、生きることに絶望することもあるかもしれません。
しかし、この小学生のように、辛くても必死で生きている人が大勢いるのです。圧倒的に多くの人は、どんな状況でも生きようと努力しています。
つらいことはたくさんありますが、生きているとそれ以上に楽しいこと、嬉しいこともいっぱいあるのです。
今は、苦しくても、この先、きっと良いことがある、生きているからこそ夢と希望がかなえられるのです。
 
一生懸命に生きる人は、輝いている人です。今日、個々に集まった生徒の皆さんが、将来も力強く行き、輝き、すばらしい人生を歩んでくれることを期待して2月の講話とします。
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